私は「アベ流言葉」には3つのパターンがあると考えている。ひとつは「戦争に巻き込まれることは絶対にない」「徴兵制は全くあり得ない,今後もない」などという「断定口調」。もうひとつは,象徴的なものとして戦後70年の安倍談話でみられた「私は」という主語を使わずに間接話法を用いる「レトリック」。最後は突然キレる「感情語」。これは第3章に詳しいが,出演したTBSテレビや日本テレビのキャスターに投げつけられた。国会で自席から飛ばすヤジもそうだろう。
「断定口調」「レトリック」「感情語」がそれぞれ単発で使われることもあるし,「断定口調」と「レトリック」,「レトリック」と「感情語」を一緒に使う話法もある。留意しなければならないのは,これらに野党政治家とリベラル系のメディアが敏感に反応,激しく批判することで「アベ流言葉」を増幅し,分断を深めるという点だ。
そして,安倍首相は謝罪させられたり,世論にも攻撃されたりしてダメージを負うことになる。しかし,これはあくまで初期現象で,この分断・対話型の手法が最終的には安倍氏にしばしば有利に働くことになるのである。
徳山善雄 (2015). 安倍晋三「迷言」録:政権・メディア・世論の攻防 平凡社 pp.11-12
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