では実際のところ,新上流階級の人々は一般のアメリカ人とどこが違うのだろうか。とりあえず見た目の違いを知りたければ,小学校の保護者相談会に顔を出すといい。まず世帯所得が全米の平均レベルにある地区の小学校へ行き,それから有名私立小学校へ行くのである。
すると,駐車場からして様子が違っている。普通の小学校では駐車している車のおよそ半分が国産だが,有名私立小学校では圧倒的多数が外車である。続いて中に入って父母たちのあいだを歩いてみると,年齢層が違うことに気づくだろう。普通の小学校では母親は20代後半から30代半ばだが,エリート小学校では20代の母親は見かけず,逆に40代が多い。父親の年齢差はもっと大きく,エリート小学校ではかなりの父親が40代で,50代も少し交じっている。さらに上も見かけなくはない。
もう1つの見た目の違いは体型である。普通の小学校では両親の3分の2が太り気味で,そのまた3分の1は明らかに肥満である(2009年の国立健康統計センターの肥満調査から算出した割合)。一方,有名私立小学校では両親はだいたい痩せていて,肥満はまれである。新上流階級は健康とフィットネスにかなり気を配っているので,スポーツクラブに通って締まった体をしている人が多く,なかにはマラソンに参加したばかりでげっそり,といった人もいるほどである。ほかには毎日1時間ヨガをする,週末にマウンテンバイクに乗る,平日にまめに泳いでいるなど,方法は各人各様だが,いずれにしても新上流階級が一般のアメリカ人より太っていることはまず考えられない。
チャールズ・マレー 橘 明美(訳) (2013). 階級「断絶」社会アメリカ:新上流と新下流の出現 草思社 pp.60-61
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