習慣になってしまうのが驚異的に感じるほど複雑な行動もある。たとえば運動の初心者にとって,車をスタートさせてドライブウェーから外に出るときは,大きな集中力が必要だ。それにはもっともな理由がある。まずガレージを開けて車のロックを解き,シートを調整してキーを差し込み,それを時計回りに回し,バックミラーとサイドミラーを動かし,障害物がないかどうか確認し,ブレーキに足を載せギアをリバースに入れたらブレーキから足を離し,頭の中でガレージから道路までの距離を予測し,そのあいだにもタイヤをまっすぐに保ちながら,道路を行き交う車に目を配り,ミラーに映る像からバンパー,ごみ箱,生け垣の距離を計算し,しかもこれらすべてをアクセルやブレーキを軽く踏みながら行い,そしてたいていの場合,同乗者にラジオをいじるのはやめろと頼まなくてはならないのだ。
チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.39-40
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