「泡立ちは大きな報酬です」ブランドマネジャーのシンクレアが言った。「シャンプーは本来,泡立つ必要はないのですが,人々は髪を洗うたびに泡立つことを期待するので,そのための化学薬品を加えています。洗濯洗剤も同様です。練り歯磨きも……いまではもっと泡立つように,すべての企業がラウリル硫酸ナトリウムを加えています。洗浄力は変わらないのですが,口の中が泡だらけになると,気分がいいんです。その泡を期待するようになると,習慣が根づいていくのです」
習慣を根づかせるのは欲求だ。どうやって欲求を生み出せばいいかがわかれば,新しい習慣を根づかせるのが楽になる。約百年前の真実は,今でも通用している。毎晩,刺激的な感覚を求めて何百万人もの人間が歯を磨く。毎朝,体内を駆け巡るエンドルフィンを求めて,何百万もの人間がジョギングシューズをはく。
それから帰宅して,キッチンを片づけたり,寝室を整えたりしたあと,一部の人はファブリーズをスプレーするのである。
チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.96
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