たとえば誇りを持ち自分自身を認める,自信を抱くことを通して意欲を高める。そのような要素がなければ我々は潑剌として生きていけないだろうし,そうやって自分を唯一無二の存在だと認識しなければ,他人を尊重することも難しくなるだろう。経験や実績に根差した自尊心は,頼もしさや魅力を醸し出す。自己愛のプラス面として,《自己肯定》といった側面が挙げられよう。
しかし,《思い上がり》とえも称すべき側面もある。尊大で自己中心的,選民意識や特権意識に彩られ,共感を欠きそれゆえ他人をないがしろにしたり利用したりすることを平然と行う。他人の心の痛みなど,まったく意に介さない。目立ちたがり屋で,傲慢さが血液のように全身を隅々まで循環している。そのように身勝手な王様気分が《思い上がり》である。
さらには自画自賛や自己陶酔,自分に都合の良い思い込み,空回り,といった《独りよがり》の側面もあり,すると周囲はその人物に辟易したり呆れたり物笑いの種にすることになる。そして《思い上がり》と《独りよがり》はまことに子どもじみた性質であり,だからこそそれらを全開にする人たちは蔑まれることになる。
春日武彦 (2012). 自己愛な人たち 講談社 pp.16-17
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