一部の研究者や動物保護団体にとって,動物虐待と対人暴力の結びつき(を主張すること)は,いまや使命感を帯びたこの上ない熱意をもって追い求めるべき,道徳上の”聖戦”のごときだ。しかし,研究者のなかにも,そうした単純な「つながり」説には疑問を抱く人が増えてきている。彼らは,「つながり」説に賛同する人たちとメディアのせいで,人々のあいだで馬鹿げた道徳的パニックがいつまでも続くことを懸念する。「つながり」説を懐疑的に見ている人たちは,動物虐待なんか無視してもかまわないと主張しているわけではない。むしろ彼ら研究者たちは,動物虐待が子どもたちを大人になってからサイコパス(=「反社会性人格障がい」とも呼ばれる)にしてしまうからという理由ではなくて,動物虐待が持つ本来の意味合いを考える必要があるという意味で,重大な問題として扱うべきだと考えている。
ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.44
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