地球上に生息するほ乳類,鳥類,魚類,は虫類,両生類を合わせた六万五〇〇〇種のなかで,人がふだんから気にかけているのはほんのひとにぎりだ。なぜわたしたちはオオサンショウウオでなくジャイアントパンダを,コンドルではなくワシを,あるいはありきたりのスズメではなくルリツグミを,ダヤックオオコウモリ(=ほ乳類のなかで二種しかいない,オスが乳を出す種のうちのひとつ)ではなくジャガーを大切にするのか?わたしたちの動物に対する考え方は,たいていの場合,その生物種の特徴によって決定される——魅力の程度,大きさ,頭のかたち,ふわふわとした毛に覆われているか(これはプラスの評価),それともぬるぬるしているか(こちらはマイナス評価),どのくらい人に似ているか,あるいはどのくらい賢いとわたしたちが考えているか。足の数が多すぎるのお足りないのも嫌われる。ふんを食べたり,血を吸ったりという気持ち悪い習性もダメ。その動物が美味しいかどうかも大事だ(ただしこれはみなが思っているほどではないけれど)。
ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.49
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