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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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好悪と役立ち

人類動物学者のジェームズ・サーペルは,わたしたち人間の他の生物種に対する考え方が文化によってどう違うかを,簡単かつ手ぎわよく把握する方法を開発した。サーペルによると,人間の動物に対する考え方はつまるところふたつの側面に分けられるという。ひとつは,その生物種について感情的にどのように感じるか(「感情 アフェクト」)。そのうちポジティブなものに愛や同情があり,ネガティブなものには恐れや嫌悪がある。もうひとつは,わたしたち人間の立場から見て,その生物種に使い途があるか,役に立つか(食用になるとか,移動手段として使えるとか),あるいは有害か(たとえば人間を食うとか)という側面だ(「有用性 ユーティリティ」)。
 ここで,直角に交わる二本の線で区切られた四つの領域を想像してほしい。垂直な線は感情の側面をあらわしていて,上が「愛/好意」,下が「嫌悪/恐れ」を示す。その線は有用性の側面をあらわす水平な線によって二分され,左側は「人間にとって無益/有害」で,右側が「有益」を示す。これで四つの区分からなる分類法が完成したことになる。区分はそれぞれ,愛されていて役に立つ動物(右上),愛されているが役に立たない動物(左上),嫌われているが役に立つ動物(右下),嫌われていてしかも役に立たない動物(左下)を意味する。この分類法は,わたしたちの生活のなかで動物たちがどんな役割を果たしているか,わたしたちが動物たちをどのように分類しているのかを考えるのにかなり役に立つ。
 人間の最良の友であるイヌに対する態度の,文化による違いを考える上でも,この分類法は有効だ。盲導犬やペットセラピー犬には明らかに「愛されていて役に立つ動物」のカテゴリーがふさわしい。一方,標準的なアメリカのペット犬は,伝統的な意味で愛されているけれど,とくに役に立っているわけではない。サウジアラビアでは,イヌは一般的に嫌悪の対象となっている。これは「嫌われていて役に立たない動物」に分類される典型的な例だろう。

ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.66-67
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