ナチスはフレーミングを利用して,アーリア人を頂点とし,ユダヤ人を「人間以下」——ほとんどの動物以下——に分類する,倒錯した道徳体系を築き上げようとした。ジャーマン・シェパードやオオカミたちが道徳ヒエラルキーのなかで高いところに位置づけられたのに対し,ユダヤ人はネズミや寄生虫,シラミなどの害獣や害虫にたとえられた。1942年,ユダヤ人はペットを飼うのを禁じられた。ナチスは,家畜を人道的なやり方で屠殺処分するよう定めた法手続きに従い,ユダヤ人たちが飼っていた何千匹というペットを(麻酔を使って)安楽死させた。これは歴史における大きな皮肉のひとつだ。彼らのイヌやネコとは違って,ユダヤ人たちはその人道的屠殺法によって保護されることはなかった。それどころか,強制収容所に送られたユダヤ人たちがそこで受けた扱いは,第三帝国の動物福祉法下でも通用しないようなひどいものだった。ナチスにとって,ユダヤ人は人間と動物の境界線上にいるあいまいな存在だった。彼らは汚れた人種,変種であり,完全な人間でも完全な動物でもない存在だった。
ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.84-85
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