わたしのお気に入りは,ペンシルバニア大学の人類動物学者,ジェームズ・サーペルによるペットの定義だ。サーペルによると,ペットとは明白な役割を持たないままわたしたちがいっしょに暮らす動物を指すのだという。でも,この幅をもたせた定義ですらも,その境界線のあたりではおかしなことが起きる。比較的最近まで,アメリカの家庭で飼われる多くの動物には何かの仕事が与えられていた。たとえばイヌだったら,家畜の群れを追い,狩りをし,番犬になり,荷車を引き,ときにはバターをかき混ぜるのを任されたりもした。ネコだって,愛情の対象としてよりもむしろ,生きたネズミ捕りとしての立場に甘んじていたのだ。アメリカでは,カナリアを筆頭に,カゴのなかで飼われる鳥の数が爆発的に増加する19世紀半ばまでは,飼い主を楽しませるのが唯一の役目という動物はほとんどまれだった。
ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.103-104
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