そして,毛色の種類よりもっとすごいのが,ハツカネズミの疾患モデルの多様さだ。まれながんを発症する系統だけでも数百に達し,ほかに,顔面変形を起こしやすいもの,生まれつき免疫系機能不全のものもいる。また,視覚障がいや聴覚障がい,味覚障がい,あるいはバランス障がいを持っているものもいるし,高血圧や低血圧,睡眠時無呼吸症,パーキンソン病,アルツハイマー,筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった病気にかかっているものもいる。不妊症の治療に取り組む研究者たちは,生殖器に障がいを持つ88系統のジャック・マウスのなかから必要な種類を選べばいい。そして,さらにすごいのは,各種の適応障がいを持つ(精神疾患モデルの)ハツカネズミまでいることだ。強迫神経症,慢性うつ,各種の依存症,多動性障がい,そして統合失調症のハツカネズミもいる。
ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.282-283
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