超心理学の実験は,思い込みや誤りが入らないように厳密に企画され,客観的なデータが得られている。また,その結果は,統計的な分析によって,一定の再現性が得られている。こうした研究発表の場は,学会や論文誌のかたちで社会にオープンになっており,超心理学はオカルトである,と退けることもできない。
また百年近い研究の積み重ねと,懐疑論者を交えた議論の蓄積もあり,他の心理学分野に比べて,こうした検討の歴史もかなり充実している。
しかし一方で,超心理学には確固たる理論がない。一部,外向的な性格の者はESPを発揮しやすいとか,夢に似た意識状態のときにESPが起きやすいとか,周りの人々から受容される状況においてESP現象が出やすいなど,ESPと相関関係のある心理・社会的条件はいくつか判明している。ところがそれ以上の,因果関係を説明する物理的メカニズムや,次はこのような実験をすると究明が進むといった「ESP発揮のモデル」が提案できていない。
石井幹人 (2016). なぜ疑似科学が社会を動かすのか:ヒトはあやしげな理論に騙されたがる PHP研究所 pp. 127-128
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