陸軍は,心理テストの作成に関しては優れた歴史を有する。陸軍で作成されたテストはそのまま民間で標準的なテストとして採用されてきた。第一次世界大戦では,読み書きのできる兵士たちには「陸軍アルファ」テストが,読み書きのできない兵士たちには「陸軍ベータ」テストが実施された。そのテストは200万人の兵士が受けたのだが,その目的は精神的に「有能」な兵士と「無能」な兵士とを振り分け,有能とみなされた兵士たちの中から責任の重い任務に就かせる兵士を選抜することにあった。賛否両論あるものの,集団知能テストは民間で瞬く間に広がった。
それからほぼ1世紀を経て,知能テストは現代では不動の位置づけを保ったままだ。第二次世界大戦で,陸軍は,より特定の能力を測定するさまざまなテストを開発した。その1つが「航空心理学プログラム」であるが,このプログラムによって,パイロットとなる人員を選抜して類別する新たな手法が開発された。開発に関わったのはいずれも20世紀のアメリカの心理学で名前を馳せた人物だった。
マーティン・セリグマン 宇野カオリ(訳) (2014). ポジティブ心理学の挑戦:“幸福”から“持続的幸福”へ ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.226-227
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