これは重大な問題だが放置されている,本当に恐ろしい問題である。そもそも私が実験心理学に魅了されたのは,内部妥当性と呼ばれる厳密さのためであった。内部妥当性の判断基準は対照実験を行うことにある。実験を通して何が何を引き起こすかが分かるからだ。
火によって水は沸騰するか?火をつければ水は沸騰する。火(対照群)がなかったら水は沸騰しない。制御不能な,悪い出来事によって腫瘍の成長が促されるのか?ラットのグループに逃避不可能なショックを与え,もう1つのグループに同様の逃避不可能なショックを与えて,これら2つのグループとショックを受けないグループとを比較してみる。逃避不可能なショックを受けるラットの腫瘍は大きな割合で成長する。したがって,逃避不可能なショックがラットの腫瘍を増殖させた,というわけだ。だが,この結果は,人間のガンの原因について何を教えてくれるだろうか?無力感が人間のガンにどう影響するかについては?これは,外的妥当性の問題だ。
マーティン・セリグマン 宇野カオリ(訳) (2014). ポジティブ心理学の挑戦:“幸福”から“持続的幸福”へ ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.338-339
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