エーレンライクは,彼女の本の執筆準備のために私に助けを求めてきた。私たちは,主に健康に関する研究文献について,1対1でのミーティングの機会を2回持った。私はそれから彼女に詳細な参考文献と何本もの論文を送ってあげた。だが,エーレンライクは,あらゆる研究を紹介することなく,一部の研究だけを「つまみ食い」して本を書いた。少数のエビデンスを強調し,楽観性が,心血管疾患,全死因死亡,およびガンを有意に予測することを明らかにした立派な研究については論評しなかった。自分にとって都合のよい部分だけを「つまみ食い」するというのは,抽象的に言えば知的不誠実さの1つの現れである。だが,実際の生死に関わる問題としては,「つまみ食い」によって,ガンで苦しむ女性が楽観性と希望を持つことの意義を退けてしまうのは,危険な報道上の不正行為だと私は考える。
マーティン・セリグマン 宇野カオリ(訳) (2014). ポジティブ心理学の挑戦:“幸福”から“持続的幸福”へ ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.363
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