確証バイアスについての初期の研究の1つにおいて,心理学者のピーター・ワッソンは被験者に3つの数からなる数列----2,4,6----を示し,被験者にその数列が一定の規則に従っていると話し,その規則が何か見つけ出すように求めた。規則を見つけ出すために,別の数を3つ書いて,規則に従って並んでいるか尋ねることができた。規則を見つけ出したら,そう言って欲しい,そうすれば,正解かどうか調べますと担当者が指示を出した。
規則が「2ずつ増える偶数」であることは非常に明白だと思えるだろう。あなたが被験者だとしたら,何を尋ねるだろうか?最初はこう聞いてみよう。「8,10,12はどうですか?規則に従いますか?」。そして,「はい,従います」と言われる。
これを聞いて,疑わしく思えてくる。あまりに易しすぎる。そこで,もう1組の数を試してみることにする。「14,16,18は規則に従いますか?」。「従います」
この時点で,規則は2ずつ増える偶数だと叫びたくなるが,どこかにひっかけがあるはずだ。そこで,さらに3つの数「20,22,24」について尋ねることにする。またまた,規則に従っている!
ほとんどの人が上記の通りのパターンに従う。こうじゃないかと思うたびに正しいと言われるため,正しい証拠が積み上がっていくように思われる。当然,最初の考えが正しいと完全に確信するようになる。すべての証拠を見るがいい!そういうわけで答がわかったと告げる。答は「2ずつ増える偶数」だ。
すると,間違っていると言われる。それが規則ではありません。実は,正解は「昇順に並んだあらゆる数」だったのだ。
なぜ間違えたのか?規則が「2ずつ増える偶数」でないことを見つけ出すのは非常に簡単だ。規則が2ずつ増える偶数であることを反証すればいいだけだ。たとえば,「5,7,9」が規則に従うかどうか尋ねることもできる。答が「はい,規則に従います」だとすると,即座に仮説の反証となるだろう。しかし,ほとんどの人は反証しようとせず,逆のことをする。つまり,規則に合う例を探すことによって規則を確認しようとする。それは役に立たない戦略である。どれだけ多くの例が積み上がったとしても,正しいことを証明することはできない。確認にならないのだ。
ダン・ガードナー 田淵健太(訳) (2009). リスクにあなたは騙される:「恐怖」を操る論理 早川書房 pp.169-170
(Gardner, D. (2008). Risk: The Science and Politics of Fear. Toronto: McClelland & Stewart Inc.)
(注:Peter Cathcart Wasonは「ウェイソン」と表記されることが多い)
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