この程度のことで驚いてはいけない。受講者自身による満足度評価は,多くの大学や会議などでもひんぱんに行われる。たとえば学生による授業評価は,何らかの評価方式を取り入れているビジネススクールの99%以上ですっかり定着している。だが最近行われた分析では,学生による評価と学習効果との間には統計的に有意な相関性は見られない,との結論が下された。「学習効果の計測が客観的であるほど,学生による評価との相関性は薄れる」という。別の分析も,「学生による教員ランキングと学習効果の間には有意な相関性はない」との結論に達している。これを読んだらたいていの人がこの種の評価を信用しなくなるだろう。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのスコット・アームストロングは,「学習というものは変化を要求する。そしてこれは,辛いことだ。重要な振る舞いや態度の変化に関わる場合には,なおのことである」と指摘する。そしてリーダーシップ開発は,まさに重要なふるまいや態度の変化を要求する。よって,効果が上がるのは辛い経験であるはずだ。こうしたわけだから,数十年も前から数々の実証研究で指摘されてきたとおり,学生による評価はマイナス面が多い。学生が授業や教員を評価するとなれば,教員のほうは多少手加減して評価を高めようとする。すると教育の効果は薄れてしまう。アームストロングが「教員評価は学生に不利益をもたらす」と断言する理由の一つは,ここにある。
ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.49-50
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