第3に,理想化されたリーダーから学ぶのは,稀有で例外的なケースから学ぶことになる点で,問題が多い。リーダーシップ神話やサクセスストーリーが真実かどうかはさて措くとしても,レアケースからの学習の有効性には疑問符がつく。ワーウィック・ビジネススクールのジャーカー・デンレルが行った調査によると,卓越したリーダーのスキルとパフォーマンスの相関性は,多くの場合にきわめて弱いという。これは,卓越したリーダーの業績は,幸運や偶発的な要素に左右される部分が大きいからだ。安定して堅実なパフォーマンスを示すが抜きん出て目立つわけではないという人たちからこそ,学べることが多いとデンレルは主張する。なぜならこうした人たちのパフォーマンスは,偶然の産物ではなく,ほんとうの能力や行動の結果である可能性が高いからだ。だから,こうした人たちの行動を分析するほうが,よほど役に立つという。
ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.79
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