「学校の食堂にはどんな危険が潜んでいるか?」とワシントンの消費者運動団体の一つ公益科学センターが出した2007年1月のプレスリリースは問いかけている。「公益科学センターによると,米国の学校の食堂の環境は,悲惨な結果を招きかねない食中毒の発生をいつでも引き起こしかねない。今日発表された報告の中で食事サービスの順位づけが行なわれている」。当然「悲惨な結果を招きかねない食中毒の発生」が「いつでも」起きる可能性があるというのは本当である。それは,いまこの瞬間にも小惑星によって学校が押しつぶされる可能性があるのが本当であるのと同じ意味で本当である。きわめて重要な質問は,どのくらいそれが起きやすいかである。その答は,プレスリリースの最後近くにほのめかされていた。「1990年から2004年のあいだに,学校関連の食事由来の病気を1万1000件以上」記録してきたと述べられている。この数字は恐ろしく感じられるかもしれないが,疾病対策センターが推定した米国全体の1年間の食中毒の件数である7600万件と比べてみて欲しい。そして,学校における食中毒が14年間に1万1000件だと,年に786件になり,生徒人口が5000万以上だとすると,生徒が学校で食中毒になる確率は約0.00157パーセントになる。このプレスリリースの正確な見出しは「学校の食堂はかなり安全」となるように思われる。しかし,こんな見出しでは,ニュース編集室で見向きもされないだろう。
ダン・ガードナー 田淵健太(訳) (2009). リスクにあなたは騙される:「恐怖」を操る論理 早川書房 pp.227-228
(Gardner, D. (2008). Risk: The Science and Politics of Fear. Toronto: McClelland & Stewart Inc.)
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