第1に,謙虚なリーダーというものはめったにいない。一方,ナルシスト型のリーダーは,生産的か非生産的かを問わず,きわめて多い。アメリカ大統領や大企業の経営者など,卓越したリーダーとして尊敬される著名人の中にもナルシスト型はすくなくない。むしろ著名なリーダーほどナルシスト・タイプが多いと言ってよかろう。彼らが積極的に顔を売り,認められ,頂点にのぼり詰めるのはこのためだ。第2に,ナルシスト型の性格や自己宣伝,自己主張といった行動は,リーダーの選抜や面接評価などで一貫して有利に働く。第3に,ナルシスト型のCEOは他の経営陣よりも報酬が高く,在任期間も長い。これはおそらく,ライバルを排除する意志があり,その術も心得ていることが一因だろう。
加えて,ナルシスト型のリーダーは,すくなくともある面では他の人よりすぐれている。まず,ビジョンやアイデアを売り込むのがうまいので,他人,とりわけ社外の他人からの支援をとりつけることに長けている。また,人々の注目を集めやすく,このタイプのリーダーがいるだけでものごとが進むという面もある。リーダーとしては大いに有効なこうしたメリットがあるとなれば,リーダーシップ産業がいくら「謙虚であれ」と言っても,謙虚なリーダーが少ないのも無理はない。
ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.119-120
PR