嘘をついたリーダーに対する個人の反応は,広く世間の反応にも見受けられる。「モラルに反する行為をした有名人を支持するときの理由付け」を調査した画期的な研究は,とりわけ興味深い。この研究によると,人々は2通りのプロセスを経て道徳的に好ましからぬ人物を支持するという。
1つは,「モラルの正当化」である。これは,「倫理に反する行為をさほど悪くないといいように解釈し,そうした行為を犯した人間を擁護する」傾向のことだ。財務報告を多少ごまかしたって,みんなやっているからいいじゃないかとか,まだ開発見通しの立っていないソフトウェア発売日を予告したって,実際に誰も困るわけじゃない,という具合である。
もう1つは,「モラルの切り離し」である。これは,「モラルに関する判断と能力や実績に関する判断を切り離して考える」心理的傾向を意味する。タイガー・ウッズは複数の女性と関係したかもしれないが,ゴルフの腕は一流だとか,ビル・クリントンはモニカ・ルインスキーといちゃついたとしても,外交と経済では信頼できるから問題ない,と考えるわけである。
ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.181-182
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