映画のすばらしい点の1つは,勧善懲悪に代表されるように,白黒がはっきりしていることだ。たとえばスターウォーズ・シリーズでは,ルーク・スカイウォーカーは白い衣装を,ダース・ベイダーは黒い衣装を身に着けている。そして私たちも,こうした思考に走りやすい。善か悪か,天国か地獄か,正直か嘘か,効率的か非効率か,といった具合である。
だがこのような思考法は,複雑な現実を過度に単純化しがちだ。単純化してしまえば,誤った確信が持てるので心地よいかもしれないが,何事も白黒をはっきりさせようとする姿勢で臨んでいたのでは,現実の複雑な世界の問題に取り組むのは一段とむずかしくなってしまう。ざっと見回しただけでも,有害な食事療法からガンの過剰治療にいたるまで,過渡の単純化に起因する危険性を指摘した文献には事欠かない。意思決定に関する研究では,高い地位の人間ほど複雑な思考法をすることがあきらかにされたが,このことは,複雑な問題に取り組むときには高度な評価・分析手法が役に立つことを示唆している。
ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.
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