弱っているひとの意思を聞くことは時には間違うことがある。弱っているからこそ本当は助けてほしいと思っていても助けてと言えなくなる。意向を質問すればするほど拒否していく。弱っているときは,「入っていいですか?」と聞くのではなく,「助けに来たよ」と入っていく。それでも断られるのであれば,それは本人が本当に嫌だということである。しかしたいていは,「ああ,ありがとう」と言う。契約とか金銭のこととか制度が絡むとややこしいことになるのだが,ひとの営みのことではそれは当然のことなのだ。契約が関係して契約が結べないことが心配だったら,そこは無償でやったらいい。支援者の仕事は相手を助けることだ。お金は目的ではない。お金は仕事を続けるための責任ではある。だからといって,お金をもらう契約が結べなかったら助けることができないのであれば本末転倒になってしまう。
森川すいめい (2016). その島の人たちは,ひとの話をきかない:精神科医,「自殺希少地域」を行く 青土社 pp.130
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