典型的な仮説主導型実験のコツは単純だ。周知の科学的学説を調べ,まだ誰も実証していない些細な問題を見つける。証明する実験を行ない,総体としての学説を支持する。そして,発表するのだ。
このタイプの実験は簡単に読めるし,結果は必ず発表される。大学での昇進と在職を確実にする履歴書も作れる。失敗のリスクが少ないので,調査会社にも人気だ。私の推定では,発表された研究のほぼ全てがこの領分に入っている。
要は,仮説主導の実験はひどくつまらないということだ。ほとんどの場合,実験結果を読む必要さえない。基本的に最初の段階で分かっていることを,科学者が証明しているに過ぎないからだ。すでに周知の仮説があるということは,人々は既に科学的論点の面白さが分かっているということだ。実験結果はせいぜい,知識を追加的に増やす程度のものにしかならない。もちろん,周知の仮説が間違いだと分かれば,実に面白いことになるだろう。だが,そのような結果は誰も信じないので,発表するのはほぼ不可能に近い。
グレゴリー・バーンズ 浅井みどり(訳) (2015). 犬の気持ちを科学する シンコーミュージック・エンタテイメント pp.59
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