第一に,簡単に楽しく検査ができることです。企業内で行われるMBTIのワークショップは,参加者にとって楽しいものであり,チームビルディングにも効力を発揮します。
ある企業向けトレーナーの女性は,会社が「MBTIタイプ」に浮かれていることを心配しています。この組織で今流行っているのは,ランチ休憩中のMBTIテストです。彼女曰く,「みんなで星占いしているようなもの」だそうです。つまりそれくらいにMBTIは気軽に行えるのです。「まるで,30分以内に届くピザの宅配みたいに,すぐに結果がわかります」——私たち心理学者が,思わず眉をひそめたくなるような話であることはおわかりでしょう。このような検査は,人間のパーソナリティを理解するのに必要な,繊細かつ詳細な分析とは正反対なものに見えます。にもかかわらず,多くの人が飛びついているのです。
二番目の理由は,商業的なアピール度が高いことです。
三番目の理由は,互いのMBTIタイプを比較することが(非科学的な占いとは違って),パーソナリティについての意義ある会話のきっかけになり得ることです。
四番目の理由は,人は簡単にこの種の検査結果を自分の特徴だと見なすという点です。多くの人は,結果を自分の「アイデンティティ」の一部として,容易に受け入れます。件のTシャツの女性も,MBTIタイプによって表されたパーソナリティを,自らのアイデンティティの一部として誇らしげに示しているように見えます。
五番目の理由は,MBTIに限ったものではありません。それは,パーソナリティ検査の質問に答えているときには懐疑的でも,いざ結果を見せられると「これはまさに私のことだ!」と魔法にかけられたかのように,信じてしまう私たちの心理です。
ブライアン・R・リトル 児島 修(訳) (2016). 自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義 大和書房 pp.52-53
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