兵器をどこかから手に入れるのは難しいとしても,自分で作るという手が残っている。多くの報道によって,まるでインターネットで手に入る製法と何本かの試験管さえ手に入れば大量破壊兵器を自分で製造できるとでもいうような印象を与えられている。幸いなことに「大量の死傷者と大量破壊を実際にもたらす兵器を開発しようとするテロリストが直面する障害は,一般に想像されているより膨大である」とギルモア委員会が書いている。「この報告書では,比較的少人数を負傷させるか,実際に殺すことのできる生物兵器か化学兵器をテロリストが製造し,散布することができないと主張しているのではない。……ことによると,何百人というかなり多い数の死傷者をもたらすことさえあるかもしれない。大事な点は,何千人どころか何万人も殺せる大量の死傷者を出す兵器を実際に製造するには,目的に合った科学や技術の分野の高度な大学教育や,かなり大きな財源,入手可能だが非常に複雑な装置や設備,兵器に確実に効力を発揮させるための厳密な検証,効果的な散布手段の開発と運用を必要とするということである」。これらの要求は非常に大きなものであるため,「少なくとも今のところ,既存のテロリスト組織の大多数だけでなく,多くの既成の国家にとっても手が届かないように思われる」。同じ年に出版された議会図書館の報告も同様の結論を出している。「大量破壊兵器は,新聞や雑誌において一般に述べられているより製造または入手するのがかなり難しく,おそらく,今日依然としてほとんどのテロリスト集団の手の届かないところにあると思われる」
ダン・ガードナー 田淵健太(訳) (2009). リスクにあなたは騙される:「恐怖」を操る論理 早川書房 pp.384-385
(Gardner, D. (2008). Risk: The Science and Politics of Fear. Toronto: McClelland & Stewart Inc.)
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