読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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意外に思うかもしれないが,近代の始まりといわれる時代は,中世キリスト教世界の崩壊とともに,異端とされてきた古代の叡智が復興し,オカルト思想が激動の時代とともに渦巻いていた。俗に「科学的」といわれるような機械論的自然観は,17世紀のニュートン力学の登場以降に確立されていくものである。
ニュートンののち,18世紀にオカルト思想の考え方を生物学に活かそうとしていたのが,科学者にして芸術家のゲーテであった。たとえば,ゲーテの『ファウスト』は当時のオカルト思想の状況をうまく伝えている。
20世紀には,精神分析学の権威ユングが,そのようなオカルト思想を人間の内面で起こる現象として捉え,集合的無意識で読み解こうと試みている。そう考えると,1950年代にユングがUFO現象に古きオカルト思想の蘇生を感じ取り,遺作となる『空飛ぶ円盤』を著したのも頷けるのである。
神秘体験と呼ばれるものは,古くは「天使」「妖精」「人魚」などによって説明されたが,現代は「宇宙人」「超能力」「心霊現象」などにとってかわられているともいえるだろう。
前田亮一 (2016). 今を生き抜くための 70年代オカルト 光文社 pp.7