もちろん人類の先行きに不安の影はある。たとえば,肥満は多くの研究者が考えていたように有害であることが判明しており,豊かな国で肥満率が上昇し続けたら,そのことによって進展が大きく損なわれる可能性がある。しかし,このような潜在的な問題は相対的にとらえる必要がある。「十分食べられないことを心配するのをやめて,はじめて食べすぎを心配し始めることができる。そして,人類の歴史の大部分,我々は十分食べられないことを心配していた」とフォーゲルは皮肉たっぷりに述べている。どのような難題に直面するにしても,先進国に暮らしている者は,これまで生きてきた人間の中で最も安全で,最も裕福な人間であることが,議論の余地なく本当であるのに変わりはない。依然として死を免れることはできないし,死ぬ原因になる多くのことが存在する。ときには心配するべきである。ときには恐がりさえするべきである。しかし,「今」生きていられていかに非常に運がいいかを常に思い出すべきである。
ダン・ガードナー 田淵健太(訳) (2009). リスクにあなたは騙される:「恐怖」を操る論理 早川書房 pp.443-444
(Gardner, D. (2008). Risk: The Science and Politics of Fear. Toronto: McClelland & Stewart Inc.)
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