読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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では,若い人たちに「自分が本当に好きなことをしなさい」とアドバイスするのは,バカげたことなのだろうか?じつはこの問題については,「興味」を研究している科学者たちが,この10年ほどで最終的な結論に達した。
第一に,人は自分の興味にあった仕事をしているほうが,仕事に対する満足度がはるかに高いことが,研究によって明らかになった。これは約100件もの研究データをまとめ,ありとあらゆる職種の従業員を網羅したメタ分析による結論だ。
たとえば,抽象的な概念について考えるのが好きな人は,複雑なプロジェクトを緻密に管理することは楽しいとは思えない。それよりも数学の問題を解くほうがずっといい。また人との交流が好きな人は,一日じゅうひとりでパソコンに向かっているような仕事は楽しいとは思えない。それよりも営業職や教職などのほうが活躍される。
さらに,自分の興味に合った仕事をしている人は,人生に対する全体的な満足度が高い傾向にあることがわかった。
第二に,人は自分のやっている仕事を面白いと感じているときのほうが,業績が高くなる。これは過去60年間に行われた,60件の研究データを集計したメタ分析による結論だ。自分の本来の興味に合った職種に就いている従業員たちは,業績もよく,同僚たちに協力的で,離職率も低いことがわかった。また,自分の興味に合った分野を専攻した大学生は,成績が高く,中途退学の確率も低いことがわかっている。
もちろん,ただ好きなことをやっているだけでは仕事は手に入らない。ゲームの「マインクラフト」がいくら得意でも,それだけで生計を立てるのは難しい。それに世のなかには,多くの選択肢から好きな職業を選べるような恵まれた状況にない人もたくさんいる。私たちが生計を立てる手段を選ぶにあたっては,かなりの制約があるのが実情だ。
アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.140-141