読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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第二次世界大戦中の資料にかぎらず,無数の歴史資料が伝えているのはこういうことだ。すなわち,先填め式マスケット時代,ほとんどの兵士は戦闘中にせっせと別の仕事をしていたのである。ずらりと並んだ兵士が敵に発砲するというイメージは,南北戦争に従軍した兵士の生々しい証言にひっくり返される。これはグリフィスが著書に引いているもので,アンティータム(南北戦争激戦地)の戦いについて語ったことばである。「さあ大変だ。こうなったら兵卒も将校も……そのへんの烏合の衆と変わりやしない。早く銃を打とうとあわてまくって,みんながてんでに弾薬包を破り,弾丸を填め,銃を仲間に渡したり,発砲したりする。その場に倒れるやつもいれば,まわれ右してとうもろこし畑に逃げ込むやつもいる」。
これが,記録に繰り返し現れる戦闘の姿なのだ。マーシャルの第二次世界大戦の研究でも,この南北戦争の描写でも,実際に敵に発砲しているのはごく一部の兵士だということがわかる。ほかの兵士たちは弾薬をそろえたり,弾丸を装填したり,仲間に銃を手渡したり,あるいはどこへともなく消え失せたりしていたのである。
デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.69