読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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兵士の使うことばにさえ,自分たちの行為の重大性への否認が満ち満ちている。兵士は「殺す」のではなく,敵を倒し,やっつけ,片づけ,ばらし,始末する。敵は掃討され,粉砕され,偵察され,ぶっ飛ばされる。敵の人間性は否定され,クラウト(ドイツ兵),ジャップ,レブ(南軍兵),ヤンク(北軍兵),ディンク(広く有色人種への蔑称。とくにベトナム兵),スラント(東洋人の蔑称),スロープ(東洋人の蔑称)という奇妙なけだものに変わる。戦争では武器さえおとなしい名称を与えられる――パフ・ザ・マジック・ドラゴン(ベトナム戦時の戦闘ヘリの愛称),ウォールアイ(初期のスマート爆弾),TOW(対戦車有線誘導ミサイル),ファットボーイとシンマン(どちらも原子爆弾)など。そして個々の兵士の武器はただの<もの(ピース)>か<豚(ホグ)>になり,銃弾は<たま(ラウンド)>になる。
デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.171-172