読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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ナチやコミュニストや暗黒街の処刑は,伝統的に後頭部に銃弾を撃ち込むという方法で行われてきたが,その理由も右に述べた現象で説明できる。絞首刑や銃殺刑を行うとき,囚人に目隠しをしたりフードをかぶせる理由もわかる。1979年のミロンおよびゴールドスタインの研究によれば,フードをかぶせられているとき,誘拐の犠牲者は殺される危険性がずっと高くなるという。これらの例からわかるのは,フードや目隠しの存在は処刑を行いやすくし,死刑執行人の精神の健康を守るのに役立つということだ。犠牲者の顔を見なくてすむことが一種の心理的な距離をもたらし,そのことが銃殺の執行を可能にし,同種である人間を殺したという事実の否認,合理化,受容という事後のプロセスを容易にするのである。
デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.225