読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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この現象はまた正反対の方向にも働く。自分と外見がはっきり違う人間は,非常に殺しやすくなるのである。組織的なプロパガンダによって,敵はほんとうは人間ではなくて<劣った生命形態>であると兵士に信じさせることができれば,同種殺しへの本能的な抵抗感は消えるだろう。人間性を否認するため,敵は<グック(東洋人の蔑称)>,<クラウト(ドイツ兵の蔑称)>,<ニップ(日本人の蔑称)>などと呼ばれる。ベトナムでは,<ボディカウント(敵の戦死者数)>的思考回路がこの現象を助長していた。敵をたんなる数として呼び,また考えるのである。あるベトナム帰還兵によれば,そのおかげで北ベトナム軍兵士やベトコンを「蟻を踏みつぶす」ように殺すことができたという。
デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.269