読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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まず,心理学史における方法論上の変革は,その第一弾が19世紀後半の「内省のみによる意識の質的分析から実験の併用による意識の統制的かつ量的分析へ」という形で出現した古典的実験心理学の登場であり,第二弾が20世紀初頭の「分析加算的実験から現象学的実験へ」という形で起こったゲシュタルト革命であり,後者と同時に起こった「内観法の否定」という行動主義革命には単なる方法上の革命を越える認識論的主張が含まれていた。次に,心理学史における認識論上の変革は,その第一弾が,17世紀のデカルト的「我(意識)の発見」に始まり,これを外的世界と並ぶ“もう一つの”広がりのある「内的世界」として外的世界と類比的な分析的学問の対象に変えてしまったロック,および,その後の連合心理学者たちの内観心理学にいたるまでの,やや長い道程として出現し,つづく第二弾は,この「内的世界」を科学の対象から追放した20世紀初頭の行動主義革命であり,そして,第三弾が,いまなお完成していないゲシュタルト心理学者による現象学的な“意識の復権”である。
高橋澪子 (2016). 心の科学史:西洋心理学の背景と実験心理学の誕生 講談社 pp.49-50