読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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上記のような新行動主義の路線に比べて,認知心理学者の態度は,いま少し寛容である。行動主義や新行動主義の心理学では,被験者の心の世界は,実験者に直接それが観察できないという理由で研究対象から除外されてしまったが,その世界は“実験者には見えなくても”被験者には(少なくとも「知覚」程度の表層的な“心理”が問題となっている場合には)明らかに見えているだろう。とするならば,その“内観”を利用しないという手はない。先の「認知地図」のようなものも(相手が人間の場合は)実験者に見える被験者の行動だけから実験者が概念的に作り上げるという回りくどいことをしなくても,被験者に見えたものを具体的に描かせることで,その“絵”から,はるかに内容豊富な情報が直接得られるに違いない。「課題解決」実験場面で,認知心理学者が,しばしば被験者の“方略”についての内観報告を記録するのも,それらを集めて系統的に分類整理(解析)することによって,被験者の心の世界がどのように階層化されており,どのような構造を持っているかを,たとえ部分的にであれ明らかにすることが出来るからである。
高橋澪子 (2016). 心の科学史:西洋心理学の背景と実験心理学の誕生 講談社 pp.53-54