読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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カルロス5世とフェリペ2世の統治下の16世紀スペインでは,ペルーの銀鉱山が生み出した莫大な富が浪費された。それ以後も,思いがけない授かりものを得た国々,とりわけ産油国(ロシア,ベネズエラ,イラク,ナイジェリア)がこれと同じ「資源の呪い」をかけられ,レント・シーキングする専制君主に支配されることになった。そうした国はせっかくの授かりものを活かせず,オランダ,日本,香港,シンガポール,台湾,韓国といった,資源はまったくないもののせっせと貿易と販売に勤しむ国よりも経済成長率が低い。17世紀には冒険的事業家の典型だったオランダ人たちでさえ,あまりに多くの天然ガスを見つけた20世紀後半には,この資源の呪いにやられた。インフレを起こした通貨は,輸出業者を痛めつけ,オランダ病と呼ばれる事態を引き起こした。日本は20世紀の前半,嫉妬心に駆られるように資源の争奪に明け暮れ,破滅したが,世紀の後半は資源なしで貿易と販売に努め,世界一の長寿国になった。2000年代には欧米諸国は,アメリカ合衆国の連邦準備制度理事会(FRB)が私たちに向けて放出した中国の貯蓄という安価な授かりものの使い方を誤った。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.62-63