読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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もう明らかだろうが,私はどちらの説も気に入らない。私に言わせれば,答えは気候や遺伝子,古代の遺跡,いや全面的には「文化」の中にすらなく,経済にある。人間はあることを互いにし始め,それが実質的に集団的知性を作り上げるきっかけとなった。すなわち彼らは,血縁者でも配偶者でもない相手と,初めて物を交換し始めたのだ。だから,ナッサリウスの貝殻が地中海から内陸部にまで至った。その結果,専門化が起き,それがテクノロジーの革新を引き起こし,そのせいでさらに専門化が促進され,交換がいっそう盛んになった。こうして「進歩」が生まれた。彼らはフリードリヒ・ハイエクが「カタラクシー」と呼んだものを思いがけず手に入れた。これは,いったん始まると自らを拡張し続けるプロセスだ。
交換は発明される必要があった。ほとんどの動物は自発的に物を交換したりはしない。ほかのどんな動物種も物々交換をすることは驚くほど珍しい。家族の中での分かち合いはあるし,食べ物と引き換えの交尾は昆虫や類人猿も含めて多くの動物で見られるが,ある動物が血縁関係にない動物から何かと交換で別の物を手に入れるケースはまったくない。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.102