読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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過去二世紀にから得られる教訓は,自由や幸福は,繁栄や交易と手に手を組んで進むものだということだ。今日,軍事クーデターによって自由を失い,独裁者の支配下に入る国はたいてい,その時点で,平均すると年率1.4パーセントの割合で一人あたりの所得の下落を経験している。二つの世界大戦のあいだにソビエト連邦とドイツと日本が独裁国家になったときにも,一人あたりの所得の下落がその一因だったのによく似ている。歴史の大きな謎の一つは,なぜ1930年代のアメリカではそうならなかったかだ。アメリカでは1930年代の深刻な経済的ショックのあいだも,全体とすれば社会的な多元性や寛容さが失われなかったばかりか勢いを得たほどだ。いや,アメリカも危ないところまで行ったのかもしれない。カフリン神父はそちらの方向にアメリカを導こうとしたし,もしルーズヴェルトがもっと野心的だったり,憲法がもっと脆弱だったりしたら,ニューディール政策がどこに行き着いたか知れたものではない。民主主義がしっかり根づいている国もあり,そういう国では民主的な価値観が生き延びられたのかもしれない。今日,民主主義が成長に必要かどうかが盛んに議論されている。中国は,それが不要であることを実証しているようにみえる。だが,成長率がゼロになれば,中国でさらなる革命あるいは弾圧が起きるだろうことに疑問の余地はない。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.179-180