読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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世界中の作物をすべて合計すると,2005年の単位面積あたりの生産量は1968年の2倍になっている。この集約化でかなりの規模の土地が節約されている。経済学者のインドゥル・ゴクラニが計算した驚異的な統計を検討してみよう。1961年の平均収穫高が1998年にもまだそのままだったら,60億の人口に食糧を供給するためには,32億ヘクタールを耕作する必要があるが,実際に1998年に耕作されていたのは15億ヘクタールだった。その差は南アメリカからチリを除いた面積に等しい。しかも32億ヘクタールというのは,雨林や湿地や半砂漠を新たに開墾した土地でも,同じレベルの収穫高が上がるという,楽観的な前提に立っての話だ。したがって収穫高が増えていなければ,実際よりもはるかに大規模に,雨林を焼き払い,砂漠に灌漑を施し,沼地を干拓し,干潟を埋め立て,牧草地を耕すことになっていたわけだ。別の言い方をすれば,今日の人びとが耕作している(耕すか,植え付けるか,牧草地にする)土地は,地球の陸地の38パーセントにすぎないが,1961年の収穫高のままであれば,今日の人口に食糧を供給するためには,82パーセントを耕作しなくてはならない。集約化によって地球の44パーセントが未開のまま守られているのだ。環境保護の観点から考えると,集約化はこれまでで最高の出来事である。現在,農民が都市へ向かったあとに再び生長した「二次」熱帯雨林が8億ヘクタール以上あり,すでに一次林とほぼ同じくらい生物多様性が豊かになっている。その発端は集約農業と都市化だ。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.227-228