読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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おおかたの経済学者は現在,人口の爆発よりもその崩壊の影響を心配している。出生率が非常に低い国では,労働力が急速に高齢化している。つまり,現役世代がどんどん減っていて,その貯蓄と税金を食う高齢者がどんどん増えているということだ。経済学者が懸念するのも無理はない。ただし,この世の終わりのように考えるのはまちがいだろう。何しろ,今日の70代は工作機械操作の仕事を続けろと言われたらあまりうれしくないだろうが,今日の40代が70代になったときには喜んでコンピューター操作の仕事を続けるに違いない。そしてここでも,合理的な楽観主義がある程度の安心をもたらす。最新の研究により,世界屈指の裕福な国々では繁栄が一定レベルに達すると出生率がわずかに上がるという,第二の人口転換が明らかになっている。たとえば,アメリカ合衆国の出生率は1976年ころに女性一人につき1.74人で底をうち,そのあと2.05人まで上がった。人間開発指数[訳注 国民の生活の質や発展の度合いを示す指標]が0.94を超える24カ国のうち18カ国で,出生率は上昇している。説明のつかない例外は日本や韓国などで,まだ下がり続けている。この新しい研究の共著者であるペンシルヴェニア大学のハンス・ピーター・コーラーは,このような国々は豊かになる過程で,女性がワークライフ・バランスを実現できる状況を整えられていないのだと考えている。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.326-327