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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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さかのぼれば

 ちょっと計算してみればすぐにわかる。人間には必ず両親,四人の祖父母,八人の曾祖父母,そのまた上に十六人の曾曾祖父母がいる。ほんの三十世代さかのぼった,おおよそ1066年ごろには,同じ世代の直系尊属が10億人以上いる計算になる(二の三十乗)。当時の世界の人口は10億人に満たないので,多くが二重にも三重にもつながる先祖がいたということだ。私と同じく,あなたがイギリス人だとすると,1066年当時生きていた数百万人のイングランド人,すなわちハロルド王,征服王ウィリアム,はたまたそのへんにいるはしため,最も卑しい奴隷を含む,ほぼ全員(行いの正しい修道僧や尼僧は除くが)が,あなたの直系の先祖ということになる。つまり新たに移民として入ってきた人々の子孫は別として,今いるイギリス人全員が,幾重にもつながる遠いいとこにあたる。たかだか三十世代前には同じ一群に属していた人たちの子孫が現代イギリス人である。人間の(およびその他のあらゆる有性の)種に一定の統一性が見られることにはなんの不思議もない。性が執拗に絶え間なく遺伝子の共有を要求するからである。


 さらに時代をさかのぼれば,民族の相違は消滅し,人類は,単一の人種にいきつくことになる。三〇〇〇世代を少しさかのぼれば,我々の祖先はみなアフリカに住む数百万人の狩猟採集民族だったのだ。彼らは,生理学的,心理学的には現代人とまったく変わらない。だから,各民族の平均的個人のあいだの遺伝子に大差はないという結果が生じるのである。



マット・リドレー 長谷川眞理子(訳) (2014). 赤の女王:性とヒトの進化 早川書房 pp.29-30


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