読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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奇妙なことに,人類平等主義の哲学よりも,進化的な見方のほうが,差別撤廃を正当化するものである。女性は異なる能力というよりはむしろ,異なる野心をもっていると考えられるからである。男性の繁殖成功度は,幾世代にもわたって政治的な序列をのぼることに依存していた。女性がその種の成功を求める動機はほとんどなかった。女性の繁殖成功度は他の要因に依存していたからである。それゆえ進化的な見方をすると,女性はめったに政治階段を登ろうとはしないだろうと予測できる。しかし,女性が参加したらどれほどうまくやるかについては何も言っていない。トップにのぼりつめた女性の数が(多くの国で女性首相がいる),トップより下のランクに位置する女性の数と不釣り合いなのは,偶然ではないと私は考えている。イギリスでは女王の統治によって,王の統治でよりも卓越し堅実な歴史が作り出されていることも偶然ではあるまい。これらの証拠は,女性が平均すると男性よりも国を治める能力にわずかに優れていることを示している。また女性は,直観力,性格判断,自己崇拝の欠如といった女性的な特徴をこれらの仕事に持ち込んでいるという,フェミニストの主張を支持するものでもある。男性には羨むしかない特徴である。企業にしろ,福祉団体にしろ,政府にしろ,あらゆる組織が崩壊する元凶は,それらが,能力よりも狡猾な野心に報いるからである(巧みにトップにのぼる人間は必ずしもその仕事がいちばんできる人間とはかぎらない)。そしてそうした野心は女性よりも男性につきものなので,女性を重視して昇進を案配するのは,きわめて好ましいのである。偏見を是正するためではなく,人間の本性を正すために。
マット・リドレー 長谷川眞理子(訳) (2014). 赤の女王:性とヒトの進化 早川書房 pp.418-419