読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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クーリッジ大統領夫妻は,とある農場にたびたび姿を見せていた。ただし二人いっしょではない。それぞれ好きな場所があって,ちがう日に訪れては案内してもらっていたのだ。養鶏場にやってきた大統領夫人は,雄鶏がさかんに雌鶏にのしかかる姿を目の当たりにした。交尾が1日数十回にもなると知って驚いた婦人は,大統領が来たらその話をしてくれと冗談で頼んだ。そのことを聞いた大統領の切り返しは,シンプルでありながら実に鋭かった。相手はいつも同じ雌鶏かとたずねたのだ。ちがうという答えに,大統領はこう言った――家内にその話をしてやってくれ。
さて,クーリッジ効果という言葉がある。もちろん合衆国第30代大統領にちなんで名づけられたわけだが,工業や経済に関するものではないし,優れた指導力の代名詞でもなく,実は性行動の一現象を表わす用語だ。交尾を繰り返して消耗し,いままでのメスでは無反応になったオスでも,新しいメスの登場でがぜんよみがえるというものである。専門的に言うなら,相手が変わることで不応期(交尾終了後,ふたたび交尾可能になるまでの時間)が短縮されるということになる。この現象は,1960年代にカリフォルニア大学の研究で確認された。
リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.34