読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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酒を飲むと異性がセクシーに見えてくる。いわゆる「ビール・ゴーグル効果」だ。昔から知られていたこの現象を,初めて科学的に記録したのがグラスゴー大学の心理学者チームだ。とはいえ彼らの研究を「科学的」と呼ぶのは,過大評価の感なきにしもあらずだ。研究者たちは大学内に何か所かあるバーに出向き,酔っぱらった学生たちに顔写真を見せて,1~7点の範囲で点数をつけてもらっただけ。ただそれでも,科学的調査の体裁はいちおう整っている。それで結果はというと,異性愛志向の適量飲酒者(アルコール摂取量が6単位まで)では,異性に対する評価が高くなった。酒を飲んでいる女性は,飲んでいない女性よりも男性の顔写真を魅力的だと評価したのだ。男女を入れかえても同様だった。相手に魅力を感じることは,関係を築く第一歩だろう。したがってこの調査もまた,酒が人間関係の促進剤であることを物語っている。酒が入ると社交的になるのは,相手がすてきに見えてくるからだということも,この調査からわかる。
リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.70