読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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悪態は言語能力の欠如という思いこみにとどめを刺したのが,マサチューセッツ・カレッジ・オブ・リベラル・アーツ(MCLA)の心理学者チームが最近発表した研究だ。ここでは言葉の全般的な能弁さと,悪態の能弁さを比較している。まず前者を調べるために,アルファベットの特定の文字で始まる単語を,1分間にできるだけたくさん書きだすテストを行なった。書いた単語が多いほど,言語スキルが高いことになる。悪態のほうも同様に,1分間に思いついた悪態をたくさん書き出してもらった。
2つのテストの成績をくらべたところ,言語全般の得点が高い人は悪態も点が高く,前者の成績が悪い人は悪態の成績も悪かった。このことから,悪態は言語能力の低さ(語彙の貧しさ)を示しているどころか,むしろ高度に言葉を操れる人が,最大の効果をねらって用いる手段だと言えるのではないだろうか。
リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.89-90