ただ,いろいろなメーカーのデザイナーやエンジニアに話を聞くと,アップルの品質管理部門と,日本のメーカーの品質管理部門では,そもそも向いている方向性が違う印象がある。
日本のメーカーのエンジニアやデザイナーにとって,品質管理部門は恐ろしい部署のようだ。「こんなに薄かったら,顧客から『壊れやすい』という苦情がくる」,「こんなに熱くなったら,顧客から『低温ヤケドになる』と苦情がくる」と製品の悪いところを見つけてはダメ出しをかけてくる。
その結果,どんなにかっこいい製品をデザインしても,どんなに“エッジのきいた”先進的製品を開発しても,最終的には角の取れた特徴のない製品に仕上がってしまう,と不平を言うエンジニアやデザイナーが多い。
これに対して,アップルの品質管理部門は,「我々がアップル品質の門番」という姿勢で「このレベルでは,まだまだアップルが目指すクールさを十分に発揮できていない」,「ここの仕上げは,(コストを上げずに)まだまだよくできる」といった具合に,前向きに管理していると聞く。
もっとも,これは日本企業の品質管理部門が悪いということではなく,品質管理部門と製品企画,開発といったチームの間で,同じゴールが共有できていないのではないかと思わされる。
林 信行 (2008). アップルの法則 青春出版社 Pp.192-193
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