アップル社に入社した知人の話を聞くと,入社してすぐはとまどうことが多いという。何をやったらいいのかがまったくわからないからだ。
日本の会社のように,入社したての社員に仕事のやり方を1つ1つ丁寧に教えてくれる親切な同僚はなかなかいない。
自分のどのような能力が買われて雇われたのかは,雇用時の契約で決まっているので,あとはそこから何をすべきなのかを自分で判断して,自分で行動する。アップルでは,何よりもこうした自立心が求められる。
ちょっとした事務手続きにしても,わからないことはあるだろう。そうしたら,周りの人に聞けばいい。ゼロから教えてくれる社員はいないが,質問をしたら進んで答えてくれる社員ばかりだ。
ノルマの仕事をこなしている限り,1人1人の社員に,それなりの裁量権は与えられている。
アップルの組織は,非常にオープンで,スティーブ・ジョブズの時代になってからは,仰々しい重役室もなくなり,ジョブズや重役人と平社員でも活発に議論ができる社風がある(もっとも,緊張する社員も多いようだが)。
ちなみに,これは米国本社だけの話ではない。
アップル日本法人には開発部隊はおらず,基本的に,マーケティングや販売,サポートなどの人材しかいないが,直営店のスタッフの1人1人まで,どう行動するのがアップルにとってためになるか,各自で判断して行動している。
林 信行 (2008). アップルの法則 青春出版社 Pp.201-202
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