読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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「残響」とは,言葉や音楽がやんだあとも室内で反射して聞こえる音をいう。ミュージシャンやスタジオエンジニアは部屋が「生きている(ライブ)」とか「死んでいる(デッド)」などと言うことがある。ライブな部屋とは,たとえば声が響いて気分よく歌える浴室のような部屋だ。デッドな部屋とは,ホテルの豪華な客室のように,柔らかい調度品やカーテンやカーペットなどに声が吸収されて響きにくい部屋だ。部屋が音をよく反響させるか,それとも静まり返るかは,主に反響によって決まる。短い残響が生じる部屋では音がすぐには消えず,言葉や音楽が微妙に強調されて華やかになる。大聖堂などの非常にライブな場所では,残響がまるで生命をもつかのごとく鳴り響き,細部まで堪能できるほど長く持続する。残響は音楽の質を高め,壮大なコンサートホールでオーケストラの奏でる音の厚みを増すのに重要な役割を果たす。適度な残響があれば声が増幅され,部屋の両端にいる人が互いの声を聞き取りやすくなる。残響などの音響的な手がかりから感じられる部屋の広さが,ニュートラルな音や快適な音に対する情緒反応に影響するということを示す証拠も存在する。私たちは,広いスペースよりも狭い部屋のほうが静穏で安全,そして快適だと感じやすい。
トレヴァー・コックス 田沢恭子(訳) (2016). 世界の不思議な音 白揚社 pp.24