読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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イングランドの海岸周辺には,かなり遠くの音が探知できるように設計された音響ミラーが残存している。コンクリートでできた醜悪で巨大な椀型の装置が海に面して設置されていて,多くは直径が4~5メートルある。20世紀初頭に敵の飛行機に対する早期警報システムとして建造された。ほとんどが椀型だが,ケント州のデンジには壁型のものがあり,変色したコンクリートが大きな弧を描いている。これは高さが5メートル,横幅が60メートルで,2階建てバス5台を縦に並べたのと同じくらいだ。接近してくる飛行機のエンジン音が増幅できるように,水平方向と垂直方向に湾曲している。
軍が実験したところ,この巨大な帯状の装置は32キロ離れたところにいる飛行機を探知することができた。これは敵機が英仏海峡を3分の1ほど渡り終えたあたりだ。しかし気象条件が悪いと敵機が10キロ以内に接近するまで探知できない場合もあり,エンジン音がもっと静かな飛行機については聴取するのに苦労した。条件のよい日でも,ほんの10分ほど早く警報が出せるだけだった。1937年に実用的なレーダーシステムが開発されると,各地に音響ミラーを設置して広い範囲を網羅しようという計画は中止された。
トレヴァー・コックス 田沢恭子(訳) (2016). 世界の不思議な音 白揚社 pp.168