読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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行動遺伝学の研究から導き出された重要な知見の1つは,個人の形質のほとんどは遺伝と非共有環境から成り立っていて,共有環境の影響はほとんど見られないということです。共有環境を作る主役は親でしょう。つまりどんな親かということが,子どもの個人差にはほとんど影響がないということなのです。
しかし,これは親が何もする必要はないということではありません。親が子供に対して直接・間接に示す家庭環境が,子供の個性を一律に育てるわけではないということが示されているだけに過ぎません。行動遺伝学が説明するのは,あくまでも「個人差」要因です。子どもにとって,親や家庭(あるいはそれに相当する人や環境)が大事で意味があることはいうまでもないことです。親や家庭は,子供の居場所であり,安全基地であり,最初に出会う社会です。そして食事や身の回りのしつけを通して,一人前の大人になるのに必要な体づくりやさまざまな社会ルールについての知識を学びます。
ここで大事なのは,子育て本のパターン通りに誰にでも当てはまる教科書のようなかかわりをするのではなく,自分が経て来た経験に根差す価値観に基づいて,子どもの中にある形質を見つけるように努力することだと思います。
安藤寿康 (2016). 日本人の9割が知らない遺伝の真実 SBクリエイティブ pp.124-125